朗読少年 宮沢賢治 詩ノート 汽車
Update: 2021-04-26
Description
汽車
一九二七、二、一二、
プラットフォームは眩ゆくさむく
緑いろした電燈の笠
きららかに飛ぶ氷華の列を
ひとは偏狭に老いようし
汽車近づけば
その窓が Ice-fern で飾られもしよう
車のなかはちひさな塵の懸垂と
そのうつくしいティンダル現象
日照はいましづかな冬で
でんしんばしらや建物や鳩
かゞやいて立つ氷の樹
青々けぶる山と雲
髪をみだし
黒いネクタイをつけて
朝の汽車にねむる写真師
……これが小さくてよき梨を産するあの町であるか……
……はい閣下 今日は多量の氷華を産して居りまする……
……それらの樹群はみなよき梨の母体であるか……
……はい閣下 あれは夏にはニッケル鋼の鏡をつるす
はんの木立でございます……
……この町の訓練の成績はどうぢゃ……
……はい閣下 寒冷ながら
水は風より より濃いものと存じます……
けむりは凍えていくつにもちぎれて
松の林に落ちこむし
アカシヤの木の乱立と
女のそのうつくしいプロファイル
もう幾百 目もあやに
風や磁気に交叉する電線と
一九二七、二、一二、
プラットフォームは眩ゆくさむく
緑いろした電燈の笠
きららかに飛ぶ氷華の列を
ひとは偏狭に老いようし
汽車近づけば
その窓が Ice-fern で飾られもしよう
車のなかはちひさな塵の懸垂と
そのうつくしいティンダル現象
日照はいましづかな冬で
でんしんばしらや建物や鳩
かゞやいて立つ氷の樹
青々けぶる山と雲
髪をみだし
黒いネクタイをつけて
朝の汽車にねむる写真師
……これが小さくてよき梨を産するあの町であるか……
……はい閣下 今日は多量の氷華を産して居りまする……
……それらの樹群はみなよき梨の母体であるか……
……はい閣下 あれは夏にはニッケル鋼の鏡をつるす
はんの木立でございます……
……この町の訓練の成績はどうぢゃ……
……はい閣下 寒冷ながら
水は風より より濃いものと存じます……
けむりは凍えていくつにもちぎれて
松の林に落ちこむし
アカシヤの木の乱立と
女のそのうつくしいプロファイル
もう幾百 目もあやに
風や磁気に交叉する電線と
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